クラシック音楽を聴くファンとしての視点で、この作品の感想を述べてみます。
わたしが普段主に聴いているのは、クラシックの中でも交響曲や合唱曲などで、ピアノ曲や室内楽曲はあまりCDも持っていません。しかし、この作品を見て、室内楽の醍醐味が少しわかった気がします。演奏家たちが互いに影響を与えあって、競うように曲を紡いでいく素晴らしさが、公生とかをりの合奏を見ていると、伝わってくるようです。ピアニストたちが演奏に傾ける情熱も、並大抵のものではありません。
しかし、ピアノ曲にしても室内楽曲にしても、聴いた演奏が少なすぎるので、まだ良し悪しがよくわかりません。古典派のソナタなんかを聴いていきたいです。まずは、本作品で使用された楽曲が収録されたCDを入手したので、そこから。
芸術が、音楽が、素晴らしい演奏が、誰かの人生に多大な影響を与えることがあります。武士も、絵見も、公生からかなり影響を受けたようですが、かをりもその一人だったとは。ただ、「自分もピアノをやりたい!」ではなく、「いっしょに演奏するためにヴァイオリンをやりたい!」と思ったのが、少し違っていました。公生はピアノをやめてしまっていましたが、なんとかして表舞台に引き戻し、ついにデュエットを成し遂げました。公生もまた、そんなかをりから影響を受けて、母親の呪縛から、自身の後悔の念から抜け出して、新たな境地に達することができたわけです。
タイトルにある「嘘」とは、かをりの嘘でした。死後に公生が受け取った手紙には、かをりの彼に対する思いが綴られていました。自分は先が長くないと知って、悔いのないようにと、コンクールの結果を気にせず感情のままに演奏したりしていたんでしょうが…… 公生に対する思いを、直接伝えることは、ついにありませんでした。いなくなる人間である以上、公生を縛りたくなかったのかもしれないし、椿の手前できなかったのもあるでしょう。しかし、切ない。
ふたりの印象に残っている青春シーンと言えば、自転車で夜空を眺めるシーン、蛍に囲まれるシーン、橋から飛びこむシーンと、いろいろありますが、一番は手のひらを合わせるシーンですね。あれがとても良かったです。
クララ・ハスキルが亡くなったとき、アルテュール・グリュミオーは大きな虚脱感に襲われたそうですが、ジャクリーヌ・デュ・プレがこの世を去ったとき、ダニエル・バレンボイムはどう思ったでしょうか。そして宮園かをりと有馬公生の場合は…… 少なくとも、公生は彼女のことを一生忘れることはできないに違いありません。
そういうわけで、演奏家たちが音楽にかける情熱と青春、そして渦巻く思いがひしひしと伝わってくる、良い作品でした。素晴らしい音楽を聴いて、演奏会に赴いて、身震いするような感動を味わうことはたまにありますが、彼らのように人生を変えるほどのものに出会うことができれば、これ以上ない幸せです。そのために、音楽を聴き続けるのかもしれません。これからも聴くぞ! まずは買って大量に積んであるCDから(笑)
JUGEMテーマ:
漫画/アニメ