3期にわたってアニメ化された本作『神のみぞ知るセカイ』も、ついに原作が完結。作品全体を振り返りつつ、最終26巻についても考えてみます。
わたしがこのシリーズを初めて見たのは、アニメの第1期をBlu-rayで購入したときです。テレビ放映当時、残念ながら見られない地域にいたため、このようになりました。コンセプトを見て「おもしろい作品に違いない」と確信し、思いきってソフトを購入したわけですが、結果的には良かった。その後、コミックスは全巻読んでおります。
シリーズ全体を振り返ってみると、「駆け魂狩り編」「女神編」「過去編」に大きく分けられます。
最初の「駆け魂狩り編」では、駆け魂に入られた女の子たちを助けるため、桂馬は「落とし神」として奮闘。女の子たちの「心のスキマ」も、次第に複雑で大きなものになっていった印象です。桂馬の攻略は、その場しのぎの解決法というよりも、女の子たちの根本的な問題を解決し、どうすれば真に本人たちのためになるのか、ということを念頭に置いていたようです。恋愛SLGでは、本当に女の子を幸せにしなければ真のエンディングは迎えられませんから、これも桂馬のゲーマーとしての矜持でしょうか。
続く「女神編」では、世界を救うため、かのんの命の危機というタイムリミットがある中で、5人同時攻略という非常にハードな闘いを強いられる桂馬。心身をすり減らしながら必死に臨みます。しかしここでもゲーマーとしての姿勢は崩さない…… 特に最後の歩美のところでは、すべてがバレそうになりながらも、理想のエンディングを追求する姿勢を貫いたのは、ある意味清々しくもありました。一方で、巻き込まれて割を食った形になってしまったちひろ。さすがの桂馬も打ちのめされ、マジで落ち込んでいました。
そして「過去編」では、それまでの駆け魂狩りから女神復活まで、すべてお膳立てされたものだったことがわかりました…… しかも桂馬自身の手で。女の子たちの気持ちを利用しなければならないことに絶望したりもしましたが、最後はやり遂げて無事帰還できました。
シリーズを通して特に重要なヒロインが何人かいます。
まずは、天理。天理は桂馬が攻略して駆け魂を出した人ではないので、ほかのヒロインズとはちょっと違います。しかし10年にもわたって人知れず備え続けた彼女は、一連の事態の一番の功労者と言っても過言ではありません。彼女が背負ってきたものの大きさや思いを考えると、最後に桂馬に選んでもらえないのは、(本人もわかっていたこととはいえ)悲しいものがあります。「エンディング」は無くとも、良い友人ではいられるかもしれませんが。
次に、エルシィ。エルシィが「ヒロイン」かどうかは議論の分かれるところかもしれませんが…… 実のところ、エルシィはただのアクマではなかったようで、何かとてつもなく大きな力を持っているらしいのですが、今回はそれを使わずに済んだようです(このあたりの掘り下げはよくわからないので、足りない気がしますが)。これも、エルシィに「この世界が大好きです」と言わしめた神にーさまのおかげ。つまり…… これはエルシィ攻略に成功していたということでは。そして彼女はリアル妹となったのでした。これは素晴らしいエンディングと思います。
そして、ちひろ。1巻から「モブキャラ」としてすでに登場していましたが、いわゆる普通の女の子として、ヒロインに。「リアルはクソゲー」と断じていた桂馬も、現実の中であがく彼女を見て、リアルについていろいろと考え始めます。「女神編」では、歩美とちひろのエピソードが、特に重要です。女神がいなかったちひろを巻き込んで、結局は傷つけることになってしまい、桂馬はかなり苦悩することになります。ちひろの駆け魂は桂馬が出したため、女神編の終盤でちひろもヴィンテージに狙われていたと思われますので、完全に無関係というわけではないですが…… ちひろは桂馬の「攻略」を受けて彼を好きになったわけではないということなので、やはり他のヒロインたちとは違います。駆け魂のときも、ちひろは「私たち似た者同士かと思ってた」というようなことを言っているので、兆候はありました(わかりにくい)。そして桂馬は最後にちひろを選んだのですが…… 「女神女子たちをしがらみから解放する」という大義名分もあるわけですが、今までのことを考えれば、桂馬にとってもちひろは他のヒロインズとは違う、特別な存在なのではないかと思います。だからこのエンディングには納得。
このシリーズでは、ゲーマーである桂馬と現実(リアル)の関わり、そして桂馬自身の成長というのが、大きなテーマのひとつになると思っていました。2次元女子とリアル女子を同じように愛することができたとしても、リアルではゲームのように、すべての女の子を100%幸せにすることなんてできませんから、やっぱりゲームとリアルは違うのです。特にちひろに関するエピソードでは、桂馬はリアルについて考え始めたり、リアルの残酷さに打ちのめされたりしているわけですが、その点があまり深く掘り下げられず、すぐ次に進んでしまうのは、少し食い足りないと思った点です。最後に桂馬はそれなりの答えを出しているので、そこは納得していますが、もっと桂馬の思いも聞いてみたかったですね。ずっと「プレイヤー」を演じているみたいでした。最後の最後まで、「女神女子たちを解放するため他とくっつく」という理論をぶち上げて、ゲーマー的理想を貫く姿は尊敬しますが…… それと、桂馬自身にもちゃんと幸せになってもらいたいところです。最後まで悟って疲れきったような表情をしていますからね、神にーさまは…… もっと笑顔も見せてほしかった。桂馬は少し…… いや、かなりヘンなんですけれど、根はお人好しの奴なんです。
というわけで、ゲームの理屈がリアルに通用するのか? という、メタ的な視点も含んだテーマから始まっている本作ですが、作品全体としては、ゲームをほとんどやらないわたしでも、いろいろ考えながら楽しく見られました。なお、神のみ・ヒロインズの中で一番好きなのは歩美で、その次にちひろですね。ほかのヒロインたちは、けっこうアクが強いです。かのんは、スターアイドルとしてファンにならなっても良いかな(笑)
今後は…… 「過去編」については、エンディングを迎えるためには不可欠なお話ですが、「華」が足りない気がするので、商業的理由からアニメ化は難しいのでは。したとしても下野紘さんの出番は少ないでしょうね(笑)
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