『俺修羅』シリーズについては、TVアニメを見て、原作ラノベを見て、コミックス版を見て、ドラマCDも聴いているので、何回も同じストーリーを見ている気がしていますが…… このたび原作の続編が出ましたので、読んでみました。GA文庫から出ている原作は、1から6.5まで読んでいます。
今回、鋭太は真涼との偽彼氏(フェイク)関係を解消し、自演乙部は新たな段階に。ヒロインたちのアプローチにも変化が見られます。
フェイク解消のきっかけとなった姫香は、中二病のエネルギーをクリエイティブな方向に活用することにしたようで、同人誌出版に向けて、同じく腐の道(?)へと入った真那とともにがんばっています。現実逃避型やのめり込み型の中二病に比べれば、こちらのほうがいいでしょう。鋭太との関係は、一歩引いた印象を受けます。
愛衣は、鋭太と真涼が別れたらしいと聞きつけると、さっそく暴走を開始していますが、効果があるようには見えず、とりあえずは精神的大勝利にとどまっているようです(笑) ネックはやはり、同じく「幼なじみ」である千和でしょうか。
鋭太に最も接近しているのは、その千和なのでしょうが、現段階では鋭太も言っていた通り、「家族であり恋愛対象ではない」というのが鋭太の意識なので、いまひとつ。
さて、このシリーズでは、ひねくれ者の真涼が何を考え、どんな気持ちで臨んでいるのかということを常に意識してきたので、その点をよく考えてみようと思います。
今回、真涼の家庭の事情と、真涼がどんな人生を歩んできたのかが、今までもなんとなくわかってはいましたが、初めて明確に示されました。とはいえ、真涼の手紙(鋭太宛て)という形式を取っているこの告白は、結局は破棄され鋭太の目には未だ触れないままで、読者にのみ示されています。まあ、鋭太も、真涼の父親と会うことになり、真那の話などもあわせてだいたいのことはわかったかもしれませんが。
鋭太との関係を解消した真涼は、「鋭太は千和と幸せになるべき!」という結論に至り、表向きはその支援をしつつ、妨害(主に愛衣)を排除する方向で動いています。では、真涼の鋭太に対する気持ちはどうでしょうか。6巻では、鋭太のことが本当に好きなのでは? と問われて、否定していたのですが…… 密かに鋭太グッズを収集し、「宴」を開いて悶絶している有様を見ますと、少なくとも自分が鋭太に好意を抱いているということについては、自覚的に認めているのではないでしょうか。恋愛アンチの真涼にしては、大きな変化で、余程いろいろと思い悩んだであろうことがうかがえます。
そして連れ戻そうとした父親に土下座までして、高校へ戻ってきた真意は…… やはり、鋭太や自演乙のメンバーと一緒にいたかったからでしょう。しかし、鋭太から差し出された救いの手は、はねのけてしまったので、今さら鋭太を頼って助けてもらうわけにはいかない。今度は自分が鋭太のために何かをしてあげなければなりません。そこで、鋭太には千和と幸せになってもらうことにしたと。でもこれは、キツネが届かないブドウは酸っぱいと決めつけるようなもので、真涼の自己満足に終わってしまうのでは。「鋭太と千和の絆には、誰も割って入れない!」というのは、ある程度は正しいのでしょうが、それも自分自身を納得させる理屈。また、自分は罰を受けるのだという、自虐的でマゾヒスティックな感覚なのでは。何より、現時点では鋭太が必ずしも「千和と恋人として幸せになる」ということを望んでいないわけですから。ずっと本当の自分とは違う自分を演じ続けてきた真涼は、ここでも自分自身を欺いているのです。
各人の将来の展望を見てみると、鋭太は医師に、千和は教員に、姫香は旅館の跡継(&同人作家?)に、愛衣は検事になりたいという、それなりの夢があるのですが、真涼だけは何もありません。「夏川家の宝石」などと言われても、所詮はお人形さんでしかないのですが、何事もなければこのまま「宝石」を演じ続け、家庭の温もりも知らぬまま、どこかの誰かと政略結婚して終わり、ということになるのでしょうから、将来の夢などというのが持てないのも仕方ありません。このままでは、あまりにも救いがなさすぎるように思われるのですが…… この状況を脱するには、実家からあれこれ言われずに済むような職に就いて自立するか、望まぬ相手と結婚させられる前に、先に誰かと結婚してしまうしかないでしょう。
鋭太の場合、真涼以外のヒロインとなら、恋人同士にならなくても、それなりに良い関係でいつづけることができそうな気がするのですが、真涼の場合はどうでしょう。そんなことを考えながら読んでみました。
最後には、意外な人が登場。鋭太が自分の恋愛アンチと向き合うには、避けて通れない対決(?)といえるでしょう。次巻も楽しみにしております。
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