飯野と胡桃沢にはめられた南三条の疑いは晴れるのか、段田凛は監督官を辞めてしまうのか…? そして今回のテーマは、裁量労働制です。
面会の場で南三条は凛が退職しないよう説得。西東京署の面々も、「小宮さんのオトモダチ」たちとともに粘りますが、嘘の被害届を出した小西を見つけられず、タイムリミット。凛が退職届を提出し、被害届が取り下げられました。「退職届」と「退職願」の違いについては、第5話で出てきましたね(笑) 労働局の総務課から連絡があり、宿舎も出ていかなければならないようす。
しかし一連の動きは、真鍋署長と土手山課長による偽装工作でした。以前凛が関わってつぶれてしまった御子柴電機で働いていた、小西の父(布施博)を探しだしました。ここで父が語ること、そして飯野社長を前に、働くとはどういうことかを説く凛は、今回の見せ場です。
小西の父が感謝していると言ってくれて、凛も少しは救われたことでしょう。亡くなった岸本社労士は帰って来ないですけど…… 飯野社長は、経営者というのは金儲けのために少しでも安く、長く労働者を働かせるため、法の網をかいくぐろうとするものだ、それが資本主義なのだ、というようなことを言いますが、対する凛は、人は幸せになりたくて働くのだ、それを守るために自分たちはいるのだと言います。世の経営者たちも、よく聞くといい(笑) 小西は会社の改善を訴え、最後には相葉社労士が登場してとどめの一撃。株主総会で飯野は解任されました。凛も言う通り、社長をも見切って企業を守った相葉社労士、ある意味とても立派です。
今回問題となったのは、専門業務型裁量労働制の運用でした。
●労働基準法
第38条の3 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、労働者を第一号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第二号に掲げる時間労働したものとみなす。
一 業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この条において「対象業務」という。)
二 対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間
三 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと。
四 対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
五 対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
六 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
この制度は、いわゆるみなし労働時間制のひとつで、第一号の対象業務には「ゲーム用ソフトウェアの創作の業務」もあります。上記の第二号で定める労働時間の分だけ働いたものとしてカウントするわけですが、休日はこの時間には含まれていませんので、休日に働けばその分を余計に支払わなければなりませんし、実際に働いたのが深夜であれば、深夜割増が必要になります。みなし労働時間制は、あくまで労働時間のカウントの仕方を決めているだけですので。また、第四号のとおり、労働者の健康及び福祉を確保するための措置を講じなければならないので、労働時間の実態には全く関知しない、というわけにはいきません。それに、ウソの始業・終業時刻を記録しているのは大きな問題ですね。是正勧告を受けることとなりました。
第1話冒頭のシーンは、葬儀に出るための格好で荷物の搬出を行ったシーンでした。なかなかのミスリード。
最終回なので、シリーズを全体的に振り返ってみます。各回のテーマは、
第1話 残業代不払い、パワハラ
第2話 セクハラ、名ばかり管理職
第3話 建設現場の安全管理
第4話 内定切り
第5話 退職問題
第6話 外国人技能実習生
第7話 労災かくし
第8話 長時間労働、研修の強制
第9話 請負契約と労働者性
第10, 11話 裁量労働制の運用
と、労働分野で社会的に問題となっている事柄を幅広く取り上げており、フィクションではありますが、現実の法律や制度にのっとった話が展開しているので、社会派作品としてはかなり良く出来ているのではないかと思いました。また、労働基準監督署・監督官というのは、あまり脚光を浴びることもない仕事ですが、最近はブラック企業の問題が関心を集めており、時宜にあったテーマを取り上げた点も評価できます。まあ、実際は監督官は人手不足なので、ドラマのようにしつこくやってはくれないでしょうが……
エンタテインメント作品としての内容を考えると、あの竹内結子さんが髪をばっさり切って、カタブツの役人を演じたということもあり、華やかさに欠ける部分があったことは否めません。段田凛のキャラクターが受け入れられたかどうか、登場人物に感情移入して見ることができたかどうかが、視聴者的評価のポイントになりそうです。竹内さん以外にも、わきを固める競演陣、佐野史郎さんをはじめとする大物俳優も次々と登場し、楽しんで見ることができました。印象に残ったのは、技能実習生を酷使していた社長役の嶋田久作氏、ワンマン社長役の升毅氏、そしてやはり終盤の柄本明氏の怪演ですね。
ストーリーは、各話で労働問題をネタとして置きつつ、連続して土手山課長の夫婦問題や、監督官VS社労士、段田凛の過去など、人間関係を描いていました。これらが最後にはみんな良い方向へ向かう形で終わったので、見終わった後も勇気づけられるような内容になっていました。必ずしも毎回ブラック企業の社長を成敗できたわけではなく、苦い感じで終わった回もありましたが、現実はもっとうまくいかないでしょうからね…… 東京労働局や監督官OBの協力も得つつ、社会派ドラマとしてうまくまとまった良い作品になっていたと思います。
JUGEMテーマ:
エンターテイメント