ベートーヴェンの交響曲については、あえて言うまでもなくどれも素晴らしい曲であり、いろいろな演奏を聴きましたが、より理解を深めようと思って入手した一冊。著者は指揮者の金聖響さん、作家・音楽評論家の玉木正之さんです。
メインは金聖響さんによる各曲解説。解説といっても、専門的な話にはあまり立ち入らず、曲にまつわるエピソードや、演奏する際に指揮者が考えていること、聴きどころなどについて語った内容となっています。
ベートーヴェンの交響曲は、奇数番号の曲に比べて偶数番号の曲はなんだか影が薄い感じになってしまっていますが、それぞれの曲に聴きどころがあることに改めて気付かせてくれます。個人的には、奇数番号ではありながら第3番「英雄」について、曲が長い割にぼんやりしたイメージしかもてなくて苦手意識がありましたが、この本を読んで聴きどころがわかると、なるほど、名曲ということがよくわかり、払拭されたのが収穫でした。金聖響氏は、第4楽章の変奏曲のうち、ハンガリー風の第5変奏はダサイとか、第9番の第4楽章後半に不要な部分がある、と言っておられますが…… それはわたしも薄々感じてました(笑) 第九はちょっとくどいんですよね、確かに。
実際に曲を聴きながら読んだ方がわかりやすいだろうと思い、
クーベリック指揮の全集を聴きながらこの本を読んだのですが、金聖響氏はピリオド・アプローチを重んじる立場から述べておられるので、演奏には合いませんでした(笑) そのあと映像で見た
アバドの演奏、
パーヴォ・ヤルヴィや
ガーディナーあたりのほうが、この本のイメージには合うでしょう。
金聖響氏は、ベートーヴェンの交響曲はどれも名曲であり、つまらなく感じたら、それは演奏がつまらないからだ、と言っておられます。……確かに。金聖響指揮のCDも出ていますから、ご本人の演奏も聴いてみたいと思います。なかなか参考になった一冊でした。
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