今から16年前の1995年3月20日は、例の地下鉄テロが起きた日なのですが、「輪るピングドラム」11話を見て、他所での指摘を見るまで気づくことができませんでした。でもようやく気が付いたのさ。
フィクションの作品で現実に起こった出来事を題材にするには、その出来事が歴史的事件であり、それなしに今の社会はあり得ないという認識が共有されている必要があると思います。例えば、わたしが現代日本社会に最も影響を与えている事象と考えるのは20世紀前半の戦争ですが、それ以外にもいろいろあるでしょう。そう考えると、あの事件から16年も経ったのか…… あの頃生まれた子は、もう晶馬や苹果くらいの歳になっているのか…… と、隔世の感があります。
あの事件については、
・組織的に大量殺人が行われた(通り魔的犯行とは異なる)
・政治信条や社会的立場に関係なくみんなが狙われた(かつての過激派などによるテロとは異なる)
という点でほかに例を見ないですし、社会に与えた影響を考えれば歴史的事件には違いないでしょう。
あの事件のことを実体験として記憶するにはまだ小さかったので、詳しく覚えているわけではありませんが、現在日々地下鉄丸ノ内線を利用している身としては決して他人ごとではないですし、暗澹たる気分になります。思えば1995年には阪神・淡路大震災も起きており、すごく嫌〜な雰囲気が漂っていたように思います。
すると、再び大震災が起こり、放射性物質がまき散らされた今年は、かの年と共通する部分があるようにも思うわけです。今年はこれ以上変なことは起こってほしくないですが、今年この時期にこうした作品を示すということは、偶然ではないでしょうし、やはりメッセージ性の強い内容になるのではという気がします。今年起こった震災は、今後振り返れば間違いなく「あれ抜きに今の日本社会は語れない」という事象になるでしょうから。
今年も、16年前のような嫌〜な空気が漂っているように感じるのは、どうしても「死」を意識せざるを得ないからです。
そして、作品中の10話、11話ではドヴォルザーク作曲・交響曲第9番「新世界より」の第2楽章が使われています。この曲は作曲者がアメリカから故郷のボヘミアを思って作った曲ということで、「懐古」「郷愁」がテーマであることは明らかです。この曲が10話ではかなり不気味な効果を伴って用いられたことは、この作品の登場人物が昭和のスターにちなんで名づけられていることを考えると、非常に示唆的だと感じられるのは気のせいでしょうか。
ともかく、16年前の事件がそのまま扱われるのかどうかも含め、この作品がどうまとまっていくのか気になるところです。
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