「近親相姦」というテーマは、古くからたびたび取り上げられてきたものではありますが、なぜこれが人々の興味を引くかというと、いつの時代もこれは絶対的なタブーだったからです。このテーマを深く研究したことなどないですが、ここへきてまたひとつ、作品が完結したので考えてみようと思います。
糸杉柾宏氏による「あきそら」全6巻。秋田書店の「一般向けエロマンガ誌」として名高い(笑)チャンピオンREDいちごの連載でした。完璧な姉・アキにあこがれていた主人公・ソラは、姉に迫られてついに一線を越えてしまう。姉とそんな関係になりつつも、周囲ではほかにもいろいろなことが起こり…… というのがストーリーの大筋。
このお話の特徴は、アキ姉との関係をはじめ、さまざまなインモラルハプニングに巻き込まれていくものの、ソラは常に「こんなのおかしい」「こんなことをしていいのか?」と、常識的な価値観から苦悩し続けているところです。それに対して、まわりの人たちが口にするセリフ…… それが「どうしていけないの?」です。これは良識も倫理も打ち砕く。
ソラは姉を慕って何度も関係を重ねていたわけですが、最終巻では父親にそのことがばれ、引き離された上に、「いけないことだから、ドキドキしていただけではないのか?」と、その気持ちにも疑問符が付きます。そして父親と母親も、実の姉弟であったために、周囲からどんな扱いを受けてきたかという重い事実。アキとソラが最終的にどのような道を選んだのか、はっきりと明らかにされてはおらず、考えさせられる内容となっています。第1巻と最終6巻の絵柄を比べてみても、最初のころのわりと可愛らしい絵柄から、最後の方は悲壮感も感じさせる味のある絵柄になっているように思います。
というわけで、近親相姦というテーマをわりと深く掘り下げて扱っていたので、正直ここまで考えさせられるとは思わず読んできたのですが、これは良い作品であったと思います。やっぱり近親相姦というのを単にギミックの一つとして扱うのではなく、ちゃんとこのくらいは掘り下げなければ。
ただこの作品については、「近親相姦」というテーマゆえか、東京都から目を付けられたようで、重版はしないとのこと。都の青少年健全育成条例は、マンガを成人指定にすることができるという規制内容で、出版できなくするわけではなかったと理解していますが、まあ、こういうことも起こるわけですね。都が直接手を下したわけではないのでしょうけど…… こうした出版作品については、たとえば「性器を見せるのは禁止」とか、外形的な要素について規制するのならまだわかるのですが、「近親相姦はダメ」となると、それはある種の価値観や思想信条を殺すことになるので、まさに表現の自由に関する問題が出てくるわけです。
この問題について深く考えすぎると時間をくってしまうので、今回は置いておいて…… アキ姉以外のヒロインで、印象に残った人々を挙げます。
●咲月ルナ (さつき るな)
ソラと同じ学校で、露出癖のある変態少女。ソラに恋心を抱くものの、自慰行為のみならず、自分が他の男によって処女喪失するさまをソラに見せつけ、喜ぶというハイレベル、筋金入りの変態です(笑) 何度もそんなことを繰り返していたにもかかわらず、結局ソラとちゃんとした行為に及ぶのは、最終巻を待たなければなりませんでした。ソラの気持ちは自分に向いていないと知りながら、傷心のソラを慰めようとする姿…… 彼女のことは「女神」と呼ぶことにしましょう(笑) いろいろ困難な目に遭うことも多かったソラですが、唯一彼の悩みを理解し、支えることができる子がいたとすれば、それはルナだったのではないでしょうか。……そうはならなかったですが。
●葵ナミ (あおい なみ)
ソラの双子の妹。親友の澄弥可奈(♀)のことが好きだったが、自分は男ではないから結ばれることはできない、さらに可奈は兄のソラが好きである、と思い込んで暴走し、ついにはヤケクソ気味に兄と関係をもってしまう。そのことが可奈にばれ、ソラを取り合う女の戦いに突入…… というハードな妹さんです。ナミの思考のひねくれ・倒錯ぶりは、突き詰めて考えてみると興味深いものがあります。
さて、上ではこの作品のテーマ性のうまさについて書きましたが、「一般向けエロマンガ誌」チャンピオンREDに載るのですから、そのことも忘れてはいけません。この点についても、本作はいい線をいっていると思います。ではここで、「ベスト・オブ・濡れ場」を発表!(笑)
一番に挙げたいのは、3巻に掲載の第15話「ふたごのひみつ」です。可奈のことで思い悩んだナミは、望むものが手に入らないのなら、いっそ破壊を…… と、自分が徹底的に犯され破滅することを願います。そして兄に激しい行為を要求…… この話は、双子が相手をどう感じるのかや、ナミの倒錯ぶりといった興味深い要素とともに、双子の交錯という画的なおもしろさ、激しい乱れっぷりと、いろんなものが合わさって大興奮の回となっております。
変態少女ルナについても挙げたいのですが、結局ちゃんとしたことをしたのは最後だけで、そのときも描写は意外とあっさりしたものでした。まあ、そういう状況じゃなかったのもありますが…… 寸止めで何度もお預けを喰らい、最後の最後で…… というところなので、ここはもうちょっとじっくり見たかったところではあります。
本作はコミックの付属やOVAでアニメ化もされており、その付属とOVA2巻は持っています。1巻は付属DVDと同じような内容になるんではないかと思って、敢えて入手はせず。アキ姉よりもナミを見たかったというのもありますが…… 原作と展開は多少異なりますが、上記「ベスト・オブ・濡れ場」の一端を感じることはできる、かな…… これも一般向けですので、あまり過激なものを期待してはいけません(笑)
というわけで、いろいろと見どころのある本作、結局全巻入手、しかも1巻以外はメロンブックスで着せ替えカバー付きのものを買いました。一般向けとはいえ、性的な描写もあるので、万人におすすめできるものではないですが、絶版になる前に入手しておくのが良いでしょう。
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